プロジェクト「Honda Cars x NPO」 

 
第1話・裏方の美学
 
 
はじめて訪れたその場所の印象は、子どもの頃に夢見た秘密基地でした。
レンチやスパナなどの工具がズラリと並べられ、様々な配線、ネジやボルトの山、そしてオイルの匂い。
ノスタルジックな雰囲気に包まれた空間は、時間という枠を超えた世界観があります。
 
2017年の夏。
大阪にあるホンダ正規ディーラー店「Honda Cars」のウェブページの撮影依頼を受け、連日店舗をまわることになりました。カメラのファインダーから見えた Honda Carsの魅力。シリーズ第1回目です。
 
 
 
 
吹き出すような汗を流しながら、作業に集中するサービスエンジニア。彼は若手ながら工場長であり、ホンダ1級整備士、 NSXスペシャリスト認定者。
店舗によっては、サービスエンジニアがフロントを兼任していることもありますが、お客様と接するのは営業など店舗のスタッフになります。
工場のスペシャリストたちは裏方の仕事です。裏方は主役を陰で支える役柄に徹するとされていますが、熱気に満ちた工場で自動車と格闘する彼らの姿こそ、主役級にかっこいい。
サービスエンジニアと同様、カメラマンの仕事も裏方です。そんな共通点があるからこそ、彼らに親近感を覚えます。
 
 
 
サービスエンジニアの視線の先には自らの手があり、機械があります。
カメラのファインダー越しに映る彼らの動きには無駄がなく、自分の役割をきっちりこなしていく姿は職人そのもの。
求められるのは技術と経験。曖昧な労働が多くなってきている近年において、この世界は白黒がはっきりしています。経験を積んで技術を上げることで仕事に対して自信を持ち、周囲からの尊敬や信頼に繋がります。
撮影を通じて幅広い年齢層のサービスエンジニアと出会いました。仕事の合間にジョークを飛ばして場を和ませるスタッフもいれば、ひたすら仕事に打ち込む寡黙な方もいます。共通している点は皆、仕事で自動車に向き合うと、言葉を発することがなくなり、全神経を自分の視線の先に集中していることでした。
 
 
 
サービスエンジニアに声をかけられるのは、自動車から離れて手を休めた時のみ。それ以外はギリギリの距離感で、彼らの奮闘する姿を撮影します。
僕は基本的にズームレンズを使用しません。フルサイズのカメラ二台に、それぞれ広角レンズと標準レンズを装着して撮影に挑みます。 ズームがないので、自分の身体で距離を詰めていきます。
全神経を何かに集中している人間には隙がなく、距離感が大切です。僕が撮影に入ることで仕事へのミスを誘発してしまわないように、こちら側も同じように集中力を高めてシャッターを切ります。
一生懸命仕事に打ち込んでいる人間の姿は純粋に美しい。それが写真で少しでも表現できれば幸いです。
 
撮影した写真は、仕事に向き合う真剣な表情を捉えたものから、その合間のオフショット、ポーズを決めた集合写真など、この秋のウェブページリニューアルで一斉に公開されます。
 
読んでいただき、ありがとうござました。次回をお楽しみに。
 
 
 
2017年8月18日 武壮隆志-むそうたかし